歯科技工士とは歯科医療の一端を担う国家資格を有する専門職です。特定の患者に対して、歯科医師の指示に基づいて、義歯注1やクラウン注2・ブリッジ、矯正装置、マウスガードなどを製作します。また、インプラントや顎顔面領域への外科的な修復に関わる装置等も製作します。従って、高度で精密な加工技術を要求されるとともに、患者ごとに異なる歯の形や色を再現する繊細な審美感覚を求められる仕事でもあります。
一般的な作業として、歯科医師が口腔内治療を行った際、その対象となる部分や対合する歯の印象を採得後、その印象材へ石膏を注入し、口腔内を再現した模型を作ります。ここからの工程が歯科技工士の仕事となり、各歯科技工士の職人感覚(個人知)によって、個々の患者に適応した義歯やクラウン等を製作します。
しかし、近年ではデジタル技術の普及により、口腔内をスキャンしたデータをもとに歯科技工物の製作ができるようになりました。今後の歯科治療及び歯科技工は更にデジタル化が進み、精度や利便性が高まることを期待されています。
歯科技工士になるためには、高校を卒業後、歯科技工士養成課程のある専門学校・短期大学・大学で必要な知識と技術を修得し、所定となる全課程を修了後に国家試験の受験資格が与えられます。また大学歯学部の歯学課程を修了した「歯科医師国家試験又は歯科医師国家試験予備試験を受けることができる者」に対しても受験資格が与えられます。全国統一の国家試験は毎年1回行われ、合格後に厚生労働大臣より免許が与えられます。
歯科医院を訪れる患者は、歯科医師や歯科衛生士とコミュニケーションを取って治療をしています。しかし義歯やクラウン等の製作をする歯科技工士とは直接的に触れ合う機会は少ないと思います。一般的な他の職業に比べて、その存在を認識されにくい歯科技工士ですが、主に下記の5か所において働いています。
注1失った歯の代わりにその欠損部へ装着する入れ歯。全ての歯を喪失した症例に装着する総入れ歯と部分的に歯を喪失した症例に装着する部分入れ歯があります。保険適用と保険適用外で使用材料も変わってきます。
注2虫歯の治療などで歯を削った後に被せる人工歯。一般的には差し歯や被せ物といった呼ばれ方をします。歯の一部を被覆するインレーといった詰め物となる治療になることもあります。材料は金属で作られたものやプラスチックで作られたもの、セラミックで作られたもの等があります。保険適用と保険適用外で使用材料も変わってきます。