ADA代議委員会・決議「83H-2005」は、「歯科医指示書の中で指示された補綴物、構成要素または材料の一部または全量が、米国外の技工所または米国技工所の海外子会社により、製造または供給される時、下請け技工所が歯科医に対し、必ず事前通知を行なうこと」を米食品医薬品局・FDA
・Food and Drug Administrationに要請している。
米国外への委託技工は1980年央に始まり、価格競争の厳しく、技工士不足の技工業界では増加してきている。米国歯科技工所協会・NADL・The
National Association of DentalLaboratoriesによれば、米国の修復製作物（主として、クラウン）の10～15％が米国外で作成されている。米国歯科技工所（一次受託者）からアウトソーシングを受けた米国内に拠点を有するブローカー技工所（二次受託者）は国外に発注する。一次委託者が直接、海外に委託する場合もある。
現行のFDA規制（Food and Drug Administration Regulations）
１． 科補綴完成物について、外国技工所の名前と住所をラベルに記載すること
２． 外国技工所がケースを作成した場合、「当該歯科医と契約を結んだ技工所のために製造したこと」または「当該歯科医と契約を結んだ技工所により販売される」旨をラベルに記載せねばならない。
３． 全ての技工所（米国内及び米国外）はFDA品質保証システム（Quality System）/GMP
(Good Manufacturing Practices)に適合しなければならない。
４． 外国で歯科技工を行なう技工所、外国技工所から輸入を行なう「一次輸入業者」、再包装業者、睡眠時中の無呼吸/鼾などを含む矯正装置製造業者はFDAに登録をしなければならない。
５． FDAは米国向け製造を行なう(米国内外の)歯科技工所に対し、登録、非登録を問わず、検査を行なう権限を有する。（登録した業者に対しては定期的検査が実施される）
６． 補綴技工製品は米国で販売される他の医療機器と同じく、FDAによる510K（市販前承認）取得を必要とされる。但し、1970年代、FDAはクラス分類及び510K適用基準・対象を「完成した修復物」でなく、「製作に使用される材料」とした。外国技工所は納品伝票に使用した材料の510K承認番号を記載し、FDAが検閲する事になっている。
米国外（技工）発注の現状 （米国歯科技工所協会・NADL報告と意見）
NADLは1,400会員を有している。米国には推定、12,000軒の歯科技工所があり、内、5,000軒は従事者1名である（one-person
operation）。国外技工（修復物）数は年間、5百万個。2007年には米国の総需要・45百万個の内、7.1百万個（15.8％相当）が国外技工になると予測されている。米国外へ2次委託をしている米国技工所数は多くはないが、当該技工所の全ビジネスに相当する場合もしばしばある。国外への技工委託を考慮している技工所数増加の理由は、資格のある歯科技工士数の減少と低廉なコストである。事態は価格主導であり、患者や民間保険の要請に依る場合もある。
NADLは事前通告制やラベリング表示を支持する。歯科医は補綴ケースの製造地に付いて関心を持つべきである。
ADA代議委員会・決議「83H-2005」の背景
１． 歯科医師は患者ケアについては、補綴治療も含めて、究極の責任を有する。
２． 米国外の歯科技工所は、明らかに、米国内の歯科技工所と同等の基準・レベルにない。
３． 歯科医は自己の経営する歯科医院スタッフのスキル・レベルや資格についてのみならず、 業務委託先についても、熟知するべきである。
４． 劣悪な技工製作物は患者に有害な事態を引き起こす可能性があるが、これは米国連邦
裁判システムの権限外である。
５． 安全確保のためのモニタリング（監視）メカニズムについては限界がある。
事前通告制の法制化を求める。
技工物の海外作成上の不都合な点：
１． ラベリング要件にも拘わらず、非登録歯科技工所がFDA検査から漏れる場合がある。
２． 税関に到着する海外からの郵便物は何百万個となる。郵便物の外箱に「医療機器在中」
との表示が無ければ、税関がFDAに検査対象貨物の到着を通知しない場合も有り得る。
３． 海外で作成された歯科補綴物に、不具合事象・欠陥があった場合、トレースできない。
４． FDA承認外の歯科材料が使用されている事がある。患者の口腔内に絶対に装着されるべきではない。
５． FDA規制に違反する場合がある。
以上
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