技工物の海外製作に関するコメント

DE・Dental Economics誌、2007年4月号  
梶@モリタ 顧問 増田次郎 

クリステン博士との質疑欄 (抜粋・要訳)

Q: 最近、技工物が海外製作されている場合があると聞いた。自分が発注したケースが、海外で製作されたのかどうかどのようにしたら分かるのか?

A:ゴードン・クリステン博士 (Dr. Gordon Christensen)
現在、全技工量の10〜20%が、米国外で製作されていると推測されていて、且つ、急激に増加しつつある。米国の技工所は、多数の国々から(発注の)勧誘を受けている。海外技工所が米国技工所に提示する技工料は、米国技工所が自身で製作するコストよりも、相当に廉価である。海外で製作された技工物を個人的に観察したが、米国製作物と競合するほど高品質のものや米国基準に及ばないものと様々である。技工所のオーナーによっては製作物の製作地(国)を、顧客に報知している。他の技工所では、米国製作物と海外製作物の場合の、二本立ての価格表示をし、料金の差異について説明している。どの産業にも有り得るように不正直な技工所も存在し、彼らは、海外製作物であることを顧客に知らせない。
私も(クリステン博士)技工製作物の製作地を知りたい。同時に、補綴物に使用された材料の種類・ブランド名、並びに海外技工所の感染症対策基準を知りたい。
連邦政府は、米国への輸入時点で海外製作物をチェック(分析)すべきであるが、係官が担当業務過剰のため、膨大な量の海外技工製作物に手が回らない。従って、「チェック義務」は、歯科医にかかっている。海外における技工製作は増え続け、米国技工業界の主要部分になるであろう。米国歯科技工士数の減少、並びに米国技工産業の影響は、大きいといえるが、今後の見通しは不明である。発展途上国が発展し、経済的に裕福になれば、米国歯科医のために行われている技工作業は、当該国の歯科医を支援するために必要とされるであろう。米国歯科技工産業の取組みは、セルフ・リミティング(自ら制限すること)かも知れない。
質問への回答:全ての歯科医が取引先・技工所のオーナーと直接話し合い(face-to-face interview)を行い、製作地に関し直接質問をするべきである。正直な技工所のオーナーは質問に回答するであろう。その回答内容に不満足であれば、(回答が得られる)技工所へ変更するべきである。

デーヴィッド・ブロック:エッセティック・ポーセレン・スタジオ(技工所)社長対談

(ダリン・セントルイス歯科医学誌編集長と)抜粋・要訳

Q:最近、海外で技工製作の傾向があると聞いているが、ブロック社長のご意見は?

A:ブロック社長

歯科技工に30年間携わっているが、技工物の海外製作は新しい傾向ではない。既に、20年前に、大手の海外技工所から申し込みがあった。米国の多数の技工所オーナーは米国技工ビジネスにとって、最大のチャレンジと受け取っている。
個人的には、ピーター・トーマス先生(Dr. Peter K. Thomas)より「精密で、個性のある高品質のサービスに集中すれば、誰であってもそれを奪える人はいない」*1との教えを頂いた。自社では、FDA・米食品医薬品局並びにISO認証歯科器材を使用している。
自社の社員を全員解雇して、海外製作に踏み切れば個人の利益は大きくなるが、そのようなことは決してしない。その上、歯科医が患者に対して、「あなたのクラウンは中国製である」と云えるはずがないと思う。

Q:$30〜$50の技工料金の違いに驚いたり、小額の金額を節約するために技工所を変更する歯科医がいる。この問題をどのように考えるか?

A:ブロック社長

Dr.アラン・グロディンは、最も料金の高額な審美歯科医であるが、自分の患者にも「街で一番料金の高い歯科医である」と告げている。それでも患者はDr.グロディンを選んでいる。多分、大抵の患者は、 診療の質を選択している。同様なことが、技工製作物とその料金についても云える。

デーヴィッド・ブロック(David Block):Aesthetic Porcelain Studios Inc.社長
*1 “If you focus on precision and individual quality of service, then no one can take that away from you” by Dr. Peter K. Thomas

                      
                                   以上
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